祖父である初代伊藤寛は外国航路のコックとして腕を磨き、叔父の禄夫はホテルの料理長、父の忠は日本で培われてきた洋食屋、四代目となる私はフランス料理。各世代学び経験してきた料理スタイルは違えども初代から当代の私に至るまで、大正・昭和・平成と時代が求めるものを提供し、お客様の記憶に残るメニューを生み出すために走り続けてまいりました。おかげさまで、神戸の老舗洋食店として親しまれ、およそ百年ものあいだこの地で営ませていただいております。
十年ひと昔とよく言われますが、百年ものあいだ親が子へ家業のたすきを渡し、子はそれを受け継ぎ自らの時代を築き次世代へ手渡してゆく。当店にとって時代と世代を超え受け継いできた「たすき」、それは洋食でした。また、つくり手の世代が変わるように、食べ手であるお客様の世代も移り変わってまいります。昨今ではイタリアン、フレンチ、スペインバルとあらゆる洋風スタイルの店舗が増え、洋という言葉では一括りにできないほどに食の選択肢が多様化しております。老舗というだけで、あぐらをかいていては生き残れない厳しい時代。外食の中でも洋食は「洋風日本料理」という私の持論のもと、祖父・叔父・父の三代にわたってつくり上げてきた伊藤グリルの主軸である、ソースが命の“煮込み”と神戸ビーフの“ステーキ”に、私の料理のルーツであるフランス料理のエッセンスを加え、オードブル・スープ・メインという昔ながらのコース料理を打ち出したスタイルで現在お客様にご提供させていただいております。また、同ビル地階にあります姉妹店「アシェット」では、同店の本格的な味をリーズナブルな価格の欧風料理としてお召し上がりいただけます。
父から看板を引き継ぎ、試行錯誤をしつつも私なりに店の味を守り進化させてまいりました。今後はさらに洋食にこだわり、ステーキだけでなく神戸ビーフのおいしさを王道の洋食メニューであるハンバーグやハッシュドビーフなどをよりグレードアップさせてまいります。さらに店舗はもちろんお取り寄せでも伊藤グリルの洋食の味をお客様のご利用の目的やシーンにあわせてお選びいただけるようにしたいと考えております。
これからも日本で生まれ育った洋食文化を多くの方々に知っていただく入口として頑張っていく所存でございます。何卒、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。